『切羽へ』 井上荒野
2009.12.6
★★★★☆
新潮社
P204
1575円
直木賞受賞作
あらすじ(「BOOK」データベースより)
静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、1人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれていくセイ。やがて二人は、これ以上進めない場所へと向かってゆく。
「切羽(きりは)」とはそれ以上先へは進めない所。宿命の出会いにゆれる男と女を、緻密な筆に描ききった哀感あふれる恋愛小説。
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まるで自分が主人公、セイと同じところに閉じ込められてしまったかのような閉塞感。
夫のことを大事に心から愛しながらも別の男に惹かれていく主人公・セイ。
丁寧な描写で、まるで彼女の内に入り込んでしまったか、覗きこんでしまったかのような気分にどっぷり浸かりました。(あくまで気分。妄想ですf^_^;)
静かに静かに、小川の流れのように綴っていく1年余り。
自分が未熟なせいか、はたまた年齢なのか切実に想う相手と巡り会っていないせいなのか、彼女の気持ちは共感まではいかないけれど理解はできる気がしました。
セイが亡くなった母親のことを回想する場面で、しずかさんが言った、“あんたの母さんは幸せだったよ”、“煙をみてたらわかる”と言ったことに対して、父親を責める親族よりも彼女の言ったことを信じた、“私がそう決めた”と言う下りがとても印象に残っています。
後にも先にもキッパリとしていて凛とした彼女はここだけのような気が…
それだけに、彼女の静かだけれど物語的にも柔らかい花弁に包まれた芯の部分が際立ったのかな、と。
静かではあるけれど、読みごたえもある作品で上質な大人のための大人の恋愛小説。
ゆっくり時間をかけて読んで、その世界に浸って欲しい1冊です。
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